01.ねぇ、痛くない?
「う、ぐ」
痛みを訴える低い呻き声。
その響きが自分の胸の奥を痺れさせる。
戦慄くように震える背中は予想よりもずっと小さく。
腕を回せばその薄い胸板に少し驚く。
何キロだっただろうか、この後輩は。
手足の長い印象を与える体躯は予想よりも細い。
「海堂、細いね」
「アンタには、言われたくないっす」
吐息混じりに答える声にはまだまだ強い意志が感じ取れる。
負けん気と、意地が、彼の理性を保たせている。
“ズキリ”と走る痛みは、胸の奥の痛み。
「そうかな…海堂、余裕だな」
「っ、はぁっ!」
腰を強く打ち付ければ、無駄な肉がついていない背中がしなる。
「は、ぁ…っく」
肩を、胸を、上下させる体躯に手を伸ばす。
無理矢理、こちらを向かせれば、まだまだ弱ることのない強い瞳に出会う。
「…唇、赤いよ」
ギリッ、と音が聞こえそうなほどに噛み締められた唇。
指でなぞれば、海堂は反射的に顔をそらせる。
「ねぇ、痛くない?」
色を失っている部分と、紅をひいたように赤くなっている部分。
その様子にまたぞくりと胸の奥がしびれる。
ギロリ、と白目のなかに浮かぶ澄んだ黒い瞳がこちらを向く。
さすような視線。
なぜこうも、自分の思い通りにならないのか。
笑みさえも、浮かぶ。
もしも、許しを請うような弱さを儚さを浮かべていれば。
もっと優しく、もっと甘く、出来るかもしれないのに。
「痛くねぇ、さっさと…終わらせろ」
仰せのままに、耳元に囁いて。
追い立てるように、打ち付ける熱。
漏れる声に、熱くなっていく身体。
反比例するように冷静になる、頭。
優しくできる瞬間は。
ともに絶頂を迎えたときだけ。
やっとのことで、意識を遠のかせる。
彼の頭を優しく包み込んで、夢に落ちていく。
「俺は、痛いよ」
FIN