04.なくなってしまうもののために
勢いよく傾けたペッボトルから出て来た液体を受け止め切れなくて。
顎に伝い、服に落ちた雫の染みを見やり、乱暴に顎を拭った。
少しのべたつきを感じて不快に眉を顰めたところを彼が見ていることを俺は知っていた。
ペットボトルに残った液体が揺れる。残り半分もない液体が揺れている。
俺たちの間にある時間は、いつかなくなってしまうもの。
きっと、好き、という気持ちもこうしていつかなくなってしまうものなんじゃないだろうかと、思う。
俺は何度、そのなくなってしまうだろうものをこうして取りこぼしてきたんだろう。
勢いよく傾けてしまって、受け止め切れなくて、こうして途方にくれて後悔に苛立つ。
何度繰り返すのだろう。何度繰り返した先に、それはなくなってしまうのだろう。
半分もないかもしれない、半分もあるかもしれない。
いつかなくなってしまうもののために、俺はただ息を殺していることしかできない。
揺らさないように、零さないように、息を殺して、ただただなくなってしまうことを恐れて。
そうして持っていても、どうせ戦慄いてしまって、どうしようもなくなることなんてわかっているのに。
なくなってしまうもののために、俺はただ息を殺しておくことしか、出来ない。
FIN