02.終りかけた日曜日


他の曜日に比べたら部活がオフになりやすい日曜日は、少し特別な日になりつつあった。
ランニングを終えて、携帯を手に取る。明日が休みだからと夜更かししてしまう乾先輩を起こすために。

案の定、電話に出た先輩の声は寝惚けていて、自然と笑みがこぼれてしまった。
いつも理路整然と喋る先輩が、しどろもどろと言葉を紡ぐ。可愛いと、思ってしまったところだった。
「愛してるよ」と、最後に囁いた言葉を聞かなかったフリをして、電話を切ってしまった。

練習を終えて、いつものように先輩の家に泊まった。今日も、また、体を重ねてしまった。
重ねるたびに増していく、痛みとか、不安とか、何処まで大きくなってしまうのか怖くて仕方ないのに。
拒絶してしまうのは、もっともっと怖かった。先輩のことを、知れば知るほどに、道は塞がれていく。

自分のないものを持っている人に、惹かれると彼は言った。
似ている部分を持っている人に、親近感を覚えると言っていた。

俺はそれらのどちらも、どちらのひとかけらも持っていないのに。そう自己嫌悪を繰り返してしまう。
果たして、いつなんだろう。彼がそれに気づくのは、俺なんか空っぽだということに、気づくのは。

終ってしまう日曜日が惜しい。必死でもがき捕まえようとしている俺の掌をすり抜けていく。
そんなことをこの、終りかけた日曜日に、いつもいつも、繰り返す。


FIN